千代香と中華まんじゅう

わたしと千代香の出会いは、長崎だった。
千代香が、本名なのか店での呼び名なのか、私に知る由もなかった。
ただ、少し深く知るにつれ、全国に点々とにその存在を匂わせた。
いつまでも、甘く、優しく、そして、謎の多い菓子だった。

 

えいけい
えいけい

こんにちわ、えいけい(@umaimon888)です。
お菓子屋さんに寄り道しながら旅行をするのが趣味です。

初めて会ったのは、東彼杵郡東彼杵町にある道の駅 彼杵の荘です。
1枚のどら焼きのような生地で餡を包んだお菓子。
端にひだがあり、餃子のような形をしていました。

道の駅 彼杵の荘 「千代香」

取りあえず購入し、帰ってからネットで検索してみました。
長崎以外に、福岡の柳川にもあるお菓子らしい。
柳川、なぜゆえピンポイントで?

さらに、調べます。

和菓子の世界では、小麦粉、砂糖、卵を基本材料とするどら焼きの皮のような生地を中花種ということ。
中花種を使った三日月型のどら焼きのような中華饅頭というお菓子があり、全国に点在していることがわかりました。
中華饅頭を画像検索すると、ひだのない千代香がいくつも出てきました。
のっぺらぼうの鮎焼きのような。
中花が中華に変わったように、ちゅうか→ちうか→ちよか→千代香と変わったのでしょうか。

ちなみに、中花の語源は南蛮菓子「ちうか」からきており、中国は関係なさそうです。
ややこしい。

私の中では、中華饅頭は冬になるとコンビニのレジ横に出現する蒸した白いものだったけど、こんな中華饅頭もあるというのは、新しい発見でした。

Wikipediaをみると、北海道、東北、東京、新潟、長崎に似たお菓子があると書いてあります。

長崎。
やはり、千代香は、中華饅頭の源氏名みたいなものなのでしょうか。

しかし、なぜ、長崎では中華/中花ではなく千代香なんでしょう。
そして、なぜ、ひだが?
ほんとに中華饅頭の親類と信じていいのでしょうか?

ああ、気になって気になって夜しか眠れません。

そして、新たな情報が。

2012年、「秘密のケンミンshow」で長野県須坂市の盛進堂の栗中華が取り上げられました。

須坂藩主に「千代香(ちよか)」という名の奥女中が持ち込んだもので、千代香饅頭が中華饅頭となったとのこと。

ん?

中華饅頭→千代香饅頭ではなく、千代香饅頭→中華饅頭?
千代香が持ち込んだ饅頭が、たまたま他地域の中華饅頭と同じものだった?
まじで?

ちなみ長野では、このお菓子は、千代香ではなく中華饅頭といいます。

あぁ、ますます混乱。

1804年創業、須坂市の二葉堂のHPを見ると、江戸時代には中華饅頭を作っていたようです。

んー、つまり、中華饅頭には、千代香説と中花種説があるということですかね。

 

1852年に出版された菓子製法書『鼎左秘録』には、中花は「中華饅頭」として製法が出ていました。
『名菓秘録』には「もろこしまんじゅう」があり、製造法は中華饅頭と同じだそうです。
(『47都道府県 和菓子/郷土菓子百科(亀井千歩子/丸善出版)』参照)

「もろこし」は、とうもろこしではなく、中国の古い呼び名のことでしょう。

 

起源になった南蛮菓子の「ちうか」も、どんなお菓子だったのかめちゃくちゃ気になります。

 

各地の中華饅頭

wikiの中華菓子情報をもとに、手当たり次第に「中華饅頭 県名or町名」等々ちょこちょこ検索して、各地の中華菓子状況を見てみたいと思います。
SEO強いページが上にくるので、偏りがあるのはご愛敬。

北海道

葬式饅頭。

中華饅頭とも中花饅頭とも表記。

どうやら大きいらしい。

菓子名 店名
中華(まんじゅう) 千秋庵(札幌/1921)・二幸(釧路/1936)
中花(まんじゅう) 千秋庵総本家(函館/1860)・松月堂(小樽/1918)・大黒屋菓子舗(妹背牛/1956)

【追記】

2022年10月、念願の北海道旅行に行ってきました。
食べた中華饅頭は2つ。
ほんとに大きかった。


千秋庵総本家(函館)

 


花月堂(小樽)

東北

東北で見つけたのは、しらはる(青森県五所川原市)の中華まんじゅう。
北海道近いし、”中華まんじゅう”なのね。

菓子名 店名
千代香(ちよか) 東根菓子舗(山形県酒田市)丸っこくてかわいい
カステラ饅頭 玉嶋屋(福島県二本松市)

 

2023.10 秋田県横手市のスーパーでみつけた中花

中花(こし餡) 蕗月堂/横手市

 

新潟県

菓子名 店名
中華(まんじゅう) 丸田屋商店(上越)・川西屋(長岡)
中花(まんじゅう) 田中屋本店(新潟市)・マスヤ製菓(新潟)
中皮(まんじゅう) 小林源吉商店(新潟)・片桐菓子店(新潟)・坂田屋本店(燕)
中香(まんじゅう) 竹内泰祥堂(上越)・池田屋(妙高)
千代香(まんじゅう) 筒場屋(長岡)
千代華 千代華 勝ちゃん(粟島)・梨本菓子舗(新潟)・美月堂(胎内)・東まんじゅう(村上)

え、千代華?

千代華って誰??

新潟では、中華、中花以外に、中香とか中皮(ちゅうかわ)とか千代華とか、呼び方多数。

2023.10 道の駅国上(燕市)で見つけた中皮。

中皮(こし餡) さかたや/長岡市寺泊

 

2023.10 小竹製菓(上越市)の中香

 

そして、また新たに気になる菓子が!!
中華饅頭の変異株と思われる笹巻」。
笹の葉で巻かれたような形。
三条地域の名物のようです。

発祥の店は、つるがや。

菓子名 笹巻
店名 創業文政敦賀屋長吉 つるがや
住所 新潟県三条市本町4-3-17
創業 徳川時代後期(文化文政時代)

2023.10 つるがやの笹巻

 

長野

菓子名 店名
中華(まんじゅう) 盛進堂(須坂)・二葉堂
千代皮 新鶴本店(下諏訪ちょっと変わった形

須坂市に「ちよか盛進堂」というお店があるんだけど、長野では中華をもしかした「ちよか」と読んでる???
あぁ、「秘密のケンミンshow」のバックナンバーが見たい。

 

福岡県柳川市

白秋庵の千代香。
ちっこくって白餡入り。
白あんの千代香は初めて。

菓子名 店名
千代香 梅花堂越山・黒田屋
ちよか 坂田屋
千代川 雲龍堂

 

長崎

菓子名 店名
ちよか 森洋海堂(大村)・入江製菓舗(南島原)
千代香 道の駅 彼杵の荘(製造:大村)・佐藤饅頭(長崎)・みよしや(諫早)・吉野屋菓子店(島原)
千代皮(ちよかわ) 徳永製菓(松浦)
千代香(ちよかわ) プチ・イケガメ(平戸)

長崎は、「千代香」が多い。

九州では、中華や中花は使われないようですね。

残念ながらお店は閉まっていて購入できなかったのだけど、松浦市の佐々屋の千代香。
お店に展示してあったものを撮影。
これまた見た子のないフォルム。
気になります。

 

ここまで中華饅頭を見てきてわかったのは、私が見た餃子のようなひだは、中華饅頭の特徴ではなく、作り手の出す個性のようですね。

北海道の中華まんじゅうと九州の千代香じゃ、大きさや形が違って面白いです。
いろいろ食べてみたいですね。

 

おまけ)「みかさ」はどら焼き?中華饅頭?

奈良など、どら焼きを三笠というところがあるのだけど、そこから来てるのかな?
中華饅頭らしき三日月形の菓子を「みかさ」という呼び方をするお店や地域もみかけました。

菓子名 みかさ
店名 五百原七福堂
住所 愛媛県大洲市本町2丁目
創業 天保時代(1830-1844年)

パッケージには「どら焼」と書いてあったけど、お店の値札には「みかさ」と書いてありました。

 

菓子名 三笠野
店名 但馬屋老舗/川口自由堂
住所 大分県竹田市竹田町
竹田の銘菓

 

これ余談なんですけど、どら焼きも三笠山も同じお店が発祥といわれているんです。
東京の梅花亭です。