農山漁村の郷土料理百選_九州

農林水産省選定の「農山漁村の郷土料理百選」に、九州(福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島)から選ばれた料理です。

「農山漁村の郷土料理百選」では、食育研究家などをふくむ8名が、約3000品の中から各県2、3品を選んでいます。

 

料理説明の引用:農山漁村の郷土料理百選 選定料理一覧

福岡

水炊き

 鶏肉を骨ごと煮込んだスープの中に、お好みの野菜を加えてポン酢で食べます。

その起源は、長崎県生まれの林田平三郎が香港に渡った際に、英国人の家庭で料理を学び、帰国後に西洋料理のコンソメと中華料理の鶏のスープをアレンジし、福岡県の店で提供したのがはじまりといわれています。

華味鳥(福岡市博多区)

がめ煮

 鶏肉、サトイモ、ゴボウ、ニンジン、タケノコなどを煮込む料理。昔、福岡県北部は筑前国(ちくぜんのくに)と呼ばれていたことから、筑前煮とも呼ばれます。

Aコープ夜須店(筑前町)

佐賀

呼子イカの活きづくり

 呼子産のイカを手早く活きづくりにします。早技によって、身が透明な状態でお皿に盛り付けることができます。

いか道楽(唐津市)

活きづくりです。
動いてます。

須古寿し

 もち米を加えて作られた酢飯に、有明海で獲れたムツゴロウの蒲焼き、しいたけ、卵、ごぼうなどをのせた寿司です。

室町時代、時の領主が米の品質改良に努めた結果、その米は寿司飯だけでなく酒造米としても有名になりました。それに感謝した領民が寿司を献上したのが須古寿司のはじまりといわれています。

Aコープしろいし店(白石町)

黒いのはムツゴロウ。

長崎

卓袱料理

 長崎県独自の発展を遂げた、和(日本)、華(中国)、蘭(オランダやポルトガルなどの西洋)料理を円卓に並べ、取り分けながら食べます。古くから国際港として栄えた長崎が育んだ国際色豊かな料理です。影響を受けた国の名前をとり、別名「和華蘭(わからん)料理」とも呼ばれています。

長崎天ぷらや、唐人から伝わった「東坡煮(トウロンポウ)」、ハトシなど。

ハトシ 山くち(長崎市)

ハトシは、エビのすり身を食パンで挟み揚げたもの。

角煮まんじゅう 岩崎本舗(長崎市)

豚の角煮(東坡煮)は卓袱料理。

具雑煮

 だし汁に丸もち、鶏肉や魚、季節の野菜など10種類以上の食材を煮込んだ雑煮。

起源は寛永十四年(1637年)に起こった島原の乱の際、海や山から様々な食材を集めて煮込んだのが始まりとされます。

姫松屋(島原市)

熊本

馬刺し

 新鮮な馬の生肉におろししょうがやにんにくなどの薬味を添えて、甘口のしょうゆで食べます。

戦国時代、豊臣秀吉の配下で肥後(現在の熊本県)を治めていた加藤清正が、食糧難の際に馬を食す文化を広めたと伝わります。昭和中期に入り、牛肉や豚肉の代わりに、役目を終えた農耕馬や軍馬を食べる習慣が一気に広がりました。

九州食肉産業(熊本市)

いきなりだご

 輪切りにしたさつまいもと餡を小麦粉の生地で包んで蒸し上げる、熊本県に昔から伝わる郷土菓子。

くま純(熊本市)

からしれんこん

 よく洗ったレンコンの両端を切り落としてからゆでて陰干しし、レンコンの穴にからしみそを詰めて数時間おき、衣をつけて揚げたものです。

江戸時代、藩主の細川忠利が病弱だったため、滋養強壮を目的とした献上品として作られたのがはじまりです。

辛子が苦手なので、自分で買うことないです・・・

大分

ブリのあつめし

 しょうゆベースのタレに漬けたブリの刺身を、あつあつのご飯にのせ、ネギやのり、ゴマなどの薬味を添えて、お茶やだし汁をかけて食べる丼料理「ブリのあつめし(温飯)」。漁業が盛んな佐伯(さいき)市に伝わる郷土料理です。

さいき 海の市場〇(佐伯市)

ひゅうが丼、りゅうきゅう丼ともよばれる。

ごまだしうどん

 「ごまだし」をゆでたうどんにのせてお湯を注いで食す、海の町佐伯市が生んだ風味豊かな麺料理です。ごまだしとは、焼いた白身魚の身をすりつぶし、しょうゆとごまを混ぜて作られたもの。

味愉嬉食堂(佐伯市)

右上に写っているのがごまだし。
ごまだしは、マンガ『美味しんぼ』にも登場している。

手延べだんご汁

 ごぼう、しいたけ、にんじん、里芋などを具材とした味噌ベースの汁に、小麦粉に水(場合によっては塩水)を加えみみたぶほどの硬さに練った生地をのばして入れて、煮込む料理。土地によってはのばさずにちぎって入れる場合もあります。

大分では特によく見かけるだご汁。

大納言(大分市)

大分には、だご汁のだごにきな粉や砂糖をまぶした郷土菓子「やせうま」もあります。

宮崎

地鶏の炭火焼き

 小口切りにした地鶏を、塩こしょうで下味をつけ、強火の炭火で炭の色が付くまで黒々とこんがり焼き上げた一品。炭火による燻製のような独特の香りが特徴です。

冷や汁

 魚を焼いてほぐし、あぶったみそ、薬味とあわせて、だし汁でのばし、氷を入れるなどして冷やし、それをごはんにかけて食べます。太平洋に面した宮崎県で獲れるアジ、トビウオ、カマス、タイなどの魚を使います。

古くは鎌倉時代の書、鎌倉管領家記録に「武家にては飯に汁かけ参らせ候、僧侶にては冷汁をかけ参らせ候」と記されていました。

JALシティホテル(宮崎市)の朝食バイキング

宮崎のホテルの朝食バイキングの常連メニュー。

鹿児島

鶏飯

 ご飯をお椀に盛り、細かく割いた蒸し鶏のささみ、錦糸卵、甘辛く煮た千切りのしいたけ、パパイヤの漬け物のみじん切り(地域によっては紅しょうがやたくあんなども使う)を盛りつけ、薬味を添えてだし汁をかけて食します。

鶏飯は1600年代に、薩摩藩のもてなし料理として生まれたと伝わります。

アイライクホテル鹿児島(姶良市)の朝食バイキング

きびなご料理

 きびなごとはイワシ科の8cm程の小魚です。酢みそで食す刺身、塩焼や天ぷら、煮付け、揚げ物、汁物など、様々な調理方法で味わうことができます。中でも、菊の花をかたどって盛りつけられる刺身「菊花造り」は、鹿児島県の郷土料理を語る上では欠かせないもてなし料理。

熊襲亭(鹿児島市) きびなごの刺身

つけあげ

 魚のすり身と野菜を使った揚げ物料理です。

琉球(現在の沖縄県)に魚肉のすり身で作るチキアギという揚げ物料理があり、江戸時代にこの料理が薩摩に伝わったのがつけあげの発祥といわれています。鹿児島県でよく食されていることから、「さつまあげ」とも呼ばれています。

熊襲亭(鹿児島市)